この記事では水族館でも人気が高い「セイウチ」の特徴や生態をご紹介していきます。
ずんぐりとした体型と長いヒゲ、遠目から見ても判別できる大きな牙を持つところがセイウチの特徴です。
体長3mを超える個体が多く、体重に至っては平均が900kg~1000kg前後となっていますので人間より遥かに大きい生き物と言えるでしょう。
ここでは、そんなセイウチの生息地・性格・食性・知能・寿命などを詳しくまとめました。
またセイウチとトドの違いや鳴き声の意味といった点も解説していきますので、ぜひ最後までご覧になっていってください。
セイウチとは?
セイウチは「哺乳綱・食肉目・セイウチ科・セイウチ属」に分類される海棲哺乳類の一種です。
大きく分けるとアシカやアザラシ、トドといった生き物と同じグループになりますが、セイウチ属に分けられるのは「セイウチのみ」です。
そんなセイウチの特徴といえば、やはり「大きな牙」が挙げられます。
セイウチの牙はオスで30cm~60cm、メスでも20cm~40cmほどの長さを誇ります。
セイウチはこの長い牙を使ってエサを捕食したり外敵から身を守ったりしているわけですが、繁殖期にはオス同士が牙をむき出しにしてケンカすることも少なくありません。
なお、オスのセイウチは3㎝~5cmほどの皮膚を持ち、さらにその下に10cm前後の皮下脂肪を蓄えています。
このように分厚い皮膚と脂肪を持っているため、セイウチ同士のケンカや天敵であるホッキョクグマの攻撃にも耐えられるそうです。
(ホッキョクグマはセイウチから返り討ちに遭う可能性があるので、捕食を目的とする場合は弱っているセイウチや子供のセイウチを狙う)
また、セイウチといえば無数に生えた「ヒゲ」も特徴のひとつに挙げられます。
セイウチのヒゲは感覚器官としての役割があり、濁った海水や光が届かない海中でもエサを感知することが可能です。
さらにセイウチは首のあたりに「気嚢」と呼ばれる器官を持っています。
この気嚢を膨らませて浮き輪代わりにするというのもセイウチならではの特徴です。
(気嚢は鳴き声を出すためにも必要な器官として考えられている)
セイウチの特徴・生態
ここからはセイウチの特徴や生態をより詳しくご紹介していきます。
「どんなところに住んでいるのか?」「どういった性格をしているのか?」といった疑問を解消していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
生息地
セイウチはユーラシア大陸の北部やカナダ東部、アラスカやグリーンランドといった北極圏に近いところに生息しています。
北極圏の沿岸部やその近海に浮かぶ氷の上で生活するというのがセイウチの習性となりますが、詳細な生息地は種類によっても変わるようです。
・タイセイヨウセイウチ種:ハドソン湾の北部からカナダ北東部、グリーンランドなどに生息
・タイヘイヨウセイウチ種:ロシア付近のチュクチ海やアラスカのベーリング海などに生息
・ラプテフ種:ラプテフ海付近に生息(タイヘイヨウセイウチと同種と考えることもある)
ご覧の通り、生息する場所によってセイウチの種類が変わるといったイメージです。
一般的にはタイヘイヨウセイウチの方がタイセイヨウセイウチより2割ほど身体が大きいとされています。
性格
人間よりも大きなセイウチを見ると「獰猛」な印象を受ける方も少なくないと思いますが、実際のところセイウチの性格は「温厚」で人間に対して積極的にコミュニケーションを取ろうとしてくれます。
好奇心が旺盛で動物の中では珍しく「遊び」を理解できるところもセイウチの特徴です。
ただし、自然環境の下で天敵となるホッキョクグマと対峙したときには、相手を追い払うために戦う姿勢を見せることもあります。
食性
成獣のセイウチは1日に30kg前後のエサを食べると言われています。
なお、野生のセイウチが主食とするのは二枚貝で、海の中にいる貝を見つけて器用に中身を吸い上げて食べます。
また、巻貝、タコ、カニやエビといった甲殻類、ナマコなどの無脊椎動物などもセイウチの好物です。
しかし、水族館では二枚貝を大量に用意することが難しいので、サバ・ホッケ・アサリなどを与えるケースが多いようです。
ちなみにセイウチは水深70mくらいまで潜れるため、海の深いところにいる生物も捕食対象となります。
鳴き声
セイウチのオスは気嚢を使って「ホイッスル音」「ベル音」「ノック音」と呼ばれる鳴き声を出します。
この鳴き声には「繁殖活動のためにメスを誘う」「他のオスに対して自分の縄張りや存在を意識させる」「外敵からの攻撃を知らせる」といった色々な意味が含まれているそうです。
知能
セイウチの知能は「人間の4歳児」に相当すると考えられています。
人間とコミュニケーションが取れて、さらに芸を覚えられるのはこうした高い知能を持っているからです。
また、セイウチは仲間同士でケンカごっこをしたり、海の鳥をおどかして遊んだりします。
「遊び」というのは生物が生きる上で必要なものではないので、「遊び」を理解している生物は一般的に知能が高いと言われています。
ちなみにこれは非常に賢い生き物として有名なイルカなどにも見られる特徴です。
セイウチとトドの違い
セイウチとトドは同じ「食肉目」に分類される海棲哺乳類です。
ただし、セイウチは「セイウチ科セイウチ属」に分けられ、セイウチの一種類しか存在していません。
対してトドは「アシカ科トド属」に分けられ、同じアシカ科にはオタリアやアシカといった生き物が存在しています。
また、見た目としてはやはり「牙の有無」が大きな違いです。
セイウチは傍から見ても立派な牙を持っていますが、トドにはそれほど大きな牙がありません。
そのほか「ヒゲの数」もセイウチとトドを見分けるポイントになります。
セイウチには無数のヒゲが生えていますが、トドのヒゲは数十本くらいです。
つまりパッと見たときに「牙とヒゲ」に目がいけばセイウチと判断できるわけです。
(そのほか耳がないものがセイウチ、耳があるものがトドといった見分け方もある)
ちなみに体長や体重にはそれほど差がなく、どちらもオスで言えば体長3m前後/体重1000kg前後といった体格をしています。
セイウチの寿命
セイウチの平均寿命は30年~40年と言われていますが、正確な年数についてはまだ分かっていない部分が多く残されています。
野生のセイウチはホッキョクグマやシャチといった天敵からの攻撃、または人間の狩猟行為によって命を落とすことが少なくありません。
つまり天寿を全うできるセイウチの数が少ないため、実際にどれくらいの寿命なのかが判断しづらいということです。
なお、日本の水族館でもっとも長くセイウチを飼育した記録は「13,903日(およそ35年)」となっています。
まとめ
海棲哺乳類の中でも特に立派な牙を特徴とする「セイウチ」について詳しく解説してきました。
ご紹介したようにセイウチはとても知能が高く、人間ともコミュニケーションが取れる貴重な生き物です。
水族館でも人気が高いセイウチは温厚かつ好奇心旺盛といった性格をしていますが、自然環境ではホッキョクグマにも負けない力強さを持っています。
ほかにもセイウチには求愛を目的とした鳴き声、周囲の環境を察知するためのヒゲといった特徴がありますので、水族館へ訪れた際にはそういった部分もご覧になってみてください。