この記事では「イルカ」「クジラ」「シャチ」の違いをご紹介していきます。
イルカとクジラ、そしてシャチはすべて「鯨類」に属する仲間たちです。
しかし、同じ仲間であっても生態や体の大きさはそれぞれ異なります。
ここでは、そんなイルカ・クジラ・シャチの特徴を分かりやすくまとめました。
水族館で見る機会が多いイルカや世界一大きな身体を持つクジラなどがどういった生き物なのかについて解説していきますので、ぜひ最後までご覧になっていってください。
イルカ・クジラ・シャチは仲間?
イルカ・クジラ・シャチはすべて鯨類と呼ばれる海生哺乳類です。
もともと地上で生活していた陸生の動物が「海」という環境に適応して進化したものが現在のイルカ・クジラ・シャチの祖先となります。
・クジラ:ヒゲクジラ類、ハクジラ類に分類
・イルカ:ハクジラ類の「マイルカ科」「インドカワイルカ科」などに分類
・シャチ:ハクジラ類の「マイルカ科シャチ属」に分類
ご覧のように現生する鯨類は「ヒゲクジラ類」と「ハクジラ類」の2つに分けられます。
その中でイルカやシャチといった生き物が個別に分類されているイメージです。
ベースが同じということもあり、イルカ・クジラ・シャチの基本的な生態は大きく変わりません。
どの生き物も哺乳類なので肺呼吸をおこない、胎生によって子孫を残していきます。
また、頭の後ろ側(背中側)に呼吸をするための噴気孔があるのもイルカ・クジラ・シャチの共通点です。
寿命に関しては身体の大きさに比例して長くなる傾向があり、一説によると体長15~20メートルまで成長するホッキョククジラは100年以上生きるとも言われています。
(中には寿命を200年とする説もある)
そんなイルカ・クジラ・シャチといった鯨類の細かな違いを次に見ていきましょう。
イルカ・クジラ・シャチの違い
イルカとクジラはもともと同じ生き物で、一般的には体長およそ4メートル未満(※)の種類を「イルカ」と呼んでいます。
そんなイルカの一種であり、マイルカ科の中でもっとも大きな種類が「シャチ」です。
つまり大きく括ってしまえばすべて「クジラ」とも言えるわけですが、それぞれには異なる生態や特徴もあります。
ここでは、そんな3種の生き物の違いを分かりやすくまとめてみました。
※厳密にぴったり4メートルを基準とするわけではなく、あくまでクジラとイルカを分けるときのおおよその大きさが4メートルくらいということ
イルカとは?
ハクジラ類の中で「成長したときの大きさが約4メートル以下」のものをイルカと呼びます。
基本的に鯨類の生息場所は海に限られていますが、イルカの中には川でも生きられるカワイルカなどが存在します。
このあたりは体長が小さく、様々な場所に適応しようと進化を遂げたイルカ独自の特徴と言えるでしょう。
○主な種類
イルカの主な種類は以下の通りです。
・マイルカ
・バンドウイルカ
・マダライルカ
・ネズミイルカ
・アマゾンカワイルカ
・インドカワイルカ
・コガシラネズミイルカ
イルカの中でもっとも小さいのはコガシラネズミイルカで、体長はだいたい1.5メートルくらいです。
つまり、イルカの大きさはおよそ1.5~4メートルに限られることになります。
ちなみに水族館でよく見かけるのはバンドウイルカやマダライルカといった種類です。
○食性・エサ
ハクジラ類に属するイルカは小型の魚や頭足類(イカやタコなど)をエサとする肉食性の生き物です。
水族館ではサバやイワシをエサとして与えられていますが、身体の大きなイルカだと1日に10キロ前後のエサを消費します。
なお、イルカには80本ほどの歯が生えているものの、エサの食べ方は「丸飲み」が基本です。
○イルカ独自の特徴
イルカは体重における脳の大きさの割合が人間の次に大きい生き物です。
そのため、昔から賢い生き物として知られていますが、イルカは高周波のパルス音を発することで周りの状況やエサとなる魚などの情報を取得し、それを仲間同士で共有します。
このようにイルカは仲間たちとコミュニケーションが取れる数少ない生き物であり、言語の代わりにパルス音を使いこなしているわけです。
ちなみに最近の研究ではイルカのように脳が発達した生き物には人間と同じような感情があることも分かっています。
※イルカは捕食目的以外に遊びの一環として「エサの魚を追いかけ回す」「イジメる」といった行動を取ることもある
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クジラとは?
クジラは「ヒゲクジラ類」と「ハクジラ類」に分類されます。
ちなみにこの地球上でもっとも大きな生物である「シロナガスクジラ」はヒゲクジラ類です。
ヒゲクジラの口元には櫛(くし)のようなヒゲがあり、このヒゲを上手く使ってエサとなるプランクトンや小魚と海水を分離させています。
(海水を丸飲みして必要なエサだけを体内に摂取する食事スタイル)
対してハクジラ類には人間と同じような歯があります。
ただし、エサを歯で噛み砕くクジラは少なく、あくまで口に入れたエサを逃がさないために歯を用いるそうです。
なお、ヒゲクジラ類の噴気孔は2つで、ハクジラ類の噴気孔は1つというのも両者の違いとなります。
○主な種類
ヒゲクジラ類とハクジラ類には以下のようなクジラが分類されています。
【ヒゲクジラ類】
・シロナガスクジラ
・ザトウクジラ
・ミンククジラ
など
【ハクジラ類】
・マッコウクジラ
・コマッコウ
・アカボウクジラ
など
世界一大きな生き物であるシロナガスクジラの全長はおよそ33メートルです。
同じヒゲクジラ類の中でもっとも小さい種であるミンククジラでも全長は10メートルほどあります。
大きさではヒゲクジラ類の方に軍配が上がりますが、ハクジラ類にはイルカ科の生き物も含まれるため種類の数ではヒゲクジラ類よりも多くなります。
○食性・エサ
群れを作る小さな小魚やプランクトンを海水ごと丸飲みするのが「ヒゲクジラ類」の特徴です。
対して「ハクジラ類」はサバやアジなどの魚、またはイカやタコといった頭足類を好んで食べます。
とはいえ、どちらも基本的には肉食性であることに違いはありません。
シャチとは?
シャチは「ハクジラ類マイルカ科」に属する生き物です。
体長はだいたい6メートル前後ですが、大きな個体だと10メートル近くまで成長するものもいます。
シャチはイルカ科に分類される生き物の中でもっとも獰猛な性格をしていて、ペンギンや同じ哺乳類であるアザラシなどを捕食することがあります。
また、ときには自分よりも大きなクジラを攻撃することもあるのがシャチ独自の特徴です。
ほかのクジラやイルカのようにエサを丸飲みするわけではなく、歯を使って相手の身体を噛みちぎるところもシャチならではの行動と言えるでしょう。
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その他イルカ・クジラ・シャチの仲間
イルカ・クジラ・シャチは鯨類に属する生き物ですが、広義には「鯨河馬形類」といった分けられ方もします。
そのため、実は「カバ」もイルカやクジラの仲間と言えるわけです。
また、ハクジラ類には「イッカク科」に属するイッカクやベルーガ(シロイルカ)といった生き物もいます。
イッカクとは非常に長い一本の角(実際には牙が進化したもの)を持つ生き物です。
北極圏に生息しているのですが、長く伸びた牙は北極の氷に穴を開けるために進化したとも言われています。
まとめ
イルカ・クジラ・シャチといった鯨類の生態やそれぞれの特徴をご紹介してきました。
ご覧いただいたようにクジラの中でも小さいものがイルカ、マイルカ科の中で個別に分類されているものがシャチとなります。
もとは同じクジラですが、生息する場所やエサの獲り方によって独自の進化を遂げているところが興味深い点と言えるでしょう。