普段サーフィンや釣りなどをしている方からすると海は身近な存在です。そんな海ですが、年々その海面が上昇していることをご存知でしょうか?大半の方からすると「なんとなく地球の温暖化が進むと南極の氷が溶けて、海面が上がってくる」くらいのイメージでしかない海面の上昇現象ですが、実はそれがひどくなると私たちが住む場所を奪っていくかもしれないのです。
ここでは、そんな海面上昇に関する原因や今後の影響についてご紹介していきたいと思います。なお、本文後半では海面上昇を抑える対策などについても触れていきますので、普段から海に行く機会が多いという方もそうでない方もご覧になっていってください。
海面上昇とは?現状は?
海面上昇という現象をまず簡単に説明すると、海水が熱膨張によって体積を増すこと、そして気温が高まることによって南極やグリーンランドの氷床が溶け出して海水自体の体積が増すことを指します。ちなみに、これまでの間に地球上では氷河期から間氷河期にかけて何度も海面の上昇や下降を繰り返してきているとされています。
多いときでは100メートル以上もの海面上昇を観測したことがあるというのですから、そのスケールの大きさは桁違いといえるでしょう。なお、人間が文明を持ち出したここ3000年の間における海面上昇率というのは、たったの0.1~0.2ミリほどとされています。
0.1ミリ程度の海面上昇であれば心配をすることはないのでは?と考える方も多くいますが、その3000年の間に起きた海面上昇の記録を、ここ数十年の間の記録が一気に抜き去っているのが現状であり問題なのです。たとえば、「IPCC第4次評価報告書」に記載されている事実に基づいて言えば、2000年から現在における間までに海面上昇の幅は年間3ミリ以上が観測されています。
また、その後の2007年の観測結果によれば年間1センチ以上の幅で海面上昇が認められるケースもあり、その数値は近代史の中では異常な数値ともいわれているのです。このように年間1センチの海面上昇が続いたとしたら、単純に計算をしても100年で1メートル以上の海面上昇が見られるわけですから、海抜ゼロメートル地帯に住んでいる方からすると深刻な問題ということが分かるでしょう。
ただでさえ、最近の日本においては台風の影響で河川が増水したり、津波が発生したりして水害による被害が出ていますので、そうした事態を考慮すると100年後の日本では現在のような場所に住んでいることは不可能となってしまうかもしれません。このように、海面上昇というのは年間で言えば微々たるものに感じられますが、長い年月を考えると自分の子供や孫の代に大きな影響を与える環境問題なのです。
海面上昇の原因
それでは何故、海面上昇という現象が起きるのかと言いますと、先ほども触れたように地球の温暖化が第一理由と考えられます。地球の平均気温が上がることで、液体である海水は熱膨張を起こしてその体積を増します。
体積を増した海水はそのまま海面上昇に繋がりますので、現在のところもっとも大きな原因に数えられているもののひとつです。また、この平均気温が上がることによって、南極やグリーンランドといった大きな氷床で形成されている陸地が、溶け出していってしまうことも原因と言えます。
北海道などでも見られる流氷とは違い、海水の浮力を用いらずに存在する氷床は、溶けたら溶けた分だけ海水上昇に影響を与えますので、熱膨張よりも直接的な原因となりやすく、現在とても警戒されている部分でもあります。また、この氷床や氷河と呼ばれる地域の下には、氷底湖というものがあり、氷床や氷河が溶け出すことによって氷底湖も同じように水を海へと流出させる働きがあります。
これもまた温暖化の弊害といわれている現象です。ほかにも地球自体の活動が活発化し、地震などによって地殻変動が起こると海底部分が隆起し海面を押し上げるとされていますが、先ほどまでの理由と比べると微々たる割合とされています。
つまり、海面上昇のもっとも大きな原因は地球全体の気温が上がっていることにあり、その温暖化という現象を止めない限りはどんどん海面が上昇してきてしまうというのが、現代の調査における見解なのです。それではこのまま温暖化が進み、海面上昇が進むといったいどういったことになるのか?具体的な例を挙げながら説明をしていきたいと思います。
海面上昇の影響
海面上昇が進むと、どんな影響が我々に与えられるのかといいますと、答えは非常にシンプルです。単純に現在の海岸線近くの街は軒並み海に侵食されることとなります。
たとえば東京の有明など埋立地のほとんどは海抜ゼロメートル地帯と呼ばれる地域ですが、先ほど触れた通り100年後に海面が1メートル以上アップすると仮定した場合、その大半の住居が浸水状態となることが予想されます。ちなみに、もし仮にこの海面上昇というものが異常気象などによって一気に1メートル単位で上がったとしましょう。
そうするとオセアニア地域にあるミクロネシア諸島やマーシャル諸島といった島国は、その国土の8割以上が海に沈み、甚大なる被害が出るとされています。また、小さな島国だけでなくバングラディシュやオランダといった海に面する割合の多い国は、海岸線沿いの街の大半が海に沈みます。
もちろん日本も例外ではなく、東京湾・大阪湾・伊勢湾といった埋め立て地が多く存在する地域は壊滅状態となり、その干潟における経済損失は最大5兆円とも見込まれているのです。ちなみに前述のバングラディシュは1メートルの海面上昇で国土の18%が海の中に沈む計算となっていて、もちろんその際には多くの移民や難民が発生しアジア各国では大きなパニックが予想されます。
こうなると自分の国が助かるからといって見過ごせる問題ではなく、地球規模でその海面上昇を抑えなければなりません。そこで、次に海面上昇を抑制するための対策というものもご覧いただきたいと思います。