この記事では北海道を代表する食材のひとつ「毛ガニ」について詳しく解説していきます。
ズワイガニ・タラバガニと並び、三大ガニに数えられているものが毛ガニです。
毛ガニは獲れるところによって旬が異なるため、1年中流通していて入手しやすいといった特徴を持っています。
ここでは、そんな毛ガニの生息地・大きさ・寿命といった特徴や生態を分かりやすくまとめてみました。
また、合わせて毛ガニの美味しい食べ方などもご紹介していますので、ぜひ最後までご覧になってみてください。
毛ガニとは?
毛ガニは「十脚目クリガニ科ケガニ属」に分類されるカニです。
主な産地は北海道であり、本州では青森県や岩手県の一部で漁がおこなわれています。
オホーツク海に面する北海道ではどのエリアでも毛ガニが水揚げされているため、当然その漁獲量は全国で1位です。
特に北海道の北部に位置する宗谷地方では秋から冬にかけて毛ガニ漁が盛んとなります。
そんな毛ガニは今でこそ高級食材のひとつとして知られていますが、昔は食用として扱われていませんでした。
毛ガニの知名度が上がったのは1940年代に北海道・長万部駅で名物となった「煮ガニ売り」のおかげと言われています。
当時は戦中・戦後の時代で食料が不足していました。
そうした中、長万部の弁当屋が毛ガニをただ煮たものを駅弁として売り出したところ、これがとても好評を得て、都市部の物産展でも取り扱われるようになり全国的に毛ガニの名前が知れ渡ったそうです。
毛ガニには種類がある?
一般的に毛ガニとして流通しているのは本種のみですが、同じクリガニ科の中には食用として出回っているものもあります。
・クリガニ
毛ガニにとても似たカニで、食用として出回ることが多い種類です。
生息域が毛ガニと若干異なるため、漁獲された場所によって毛ガニと区別する場合もあります。
なお、毛ガニと違ってクリガニのメスは漁獲して良いことになっています。
・トゲクリガニ
津軽海峡から東京湾までの広い範囲に分布するカニです。
毛ガニやクリガニと同じように食用として扱われていますが、カニミソ部分に貝毒を含むケースがあるとされています。
こうした理由から一般的にはあまり流通していません。
※ただし、これまでにトゲクリガニを原因とする食中毒事例や健康被害は発生していない。
メスは流通しない?
毛ガニのメスは「水産物資源の確保や保護」を名目として、各自治体で漁獲してはいけない決まりとなっています。
そのため、市場に毛ガニのメスは出回りません。
仮に「毛ガニのメスを入荷しました」などと書かれて売られていた場合は、クリガニのメスである可能性が高いことを覚えておきましょう。
(中には本物も存在するかもしれませんが確率は低い)
ちなみに毛ガニは、オスでも甲羅の大きさによって漁獲の可否が変わってきます。
一定の大きさに満たない毛ガニのオスは漁獲してはいけないとする自治体が多いので、市場に並ぶのは甲羅の大きさが9cm〜10cm以上のものとなります。
なお、毛ガニのメスは産卵が終わった後にしか脱皮ができず、これによってオスよりも体長が大きくなりづらいといった特徴があるそうです。
旬の時期は?
毛ガニは生息する場所によって成長の度合いが異なるため、旬の時期も水揚げされるところによって変わってきます。
簡単に言えば毛ガニの旬は「1年中」であり、産地を選べばいつでも最高の状態の毛ガニが食べられるということです。
・春:オホーツク海
・夏:内浦湾
・秋:根室や釧路
・冬:十勝
上記は毛ガニが旬を迎える目安の季節とその漁獲エリアです。
このほか、岩手県など東北地方で獲れる毛ガニの旬は冬となっていますので、カニを選ぶときの参考にしてみてください。
毛ガニの特徴・生態
ここからは毛ガニの生息地・大きさ・寿命といった詳しい生態をご紹介していきます。
生息地
毛ガニは水深30m〜200mほどの比較的浅いところに生息するカニです。
日本の場合だと北海道の沿岸部全域で水揚げされていて、ほかには東北地方の太平洋側・日本海側の一部で毛ガニの生息が確認されています。
世界に目を向けてみると太平洋の北西部からアラスカ沿岸までを生息地としているので、なかなか幅広い分布を見せるカニと言えます。
ちなみに、そんな毛ガニの特徴は季節によって生息地を変えるところです。
夏になると深いところまで潜り、冬になるとより浅瀬に移動します。
こうした生態からも毛ガニは冷たい海を好む生き物ということが分かってきますが、毛ガニの適水温は5℃~10℃とのことです。
大きさ
毛ガニの大きさはオスとメスによって変わります。
オスは甲羅の大きさがだいたい15cm程度で、メスは12cm程度です。
オスの甲羅は楕円形のような形状で、メスの甲羅は円形に近いというのが両者の違いとなります。
また、オスは1年の間に脱皮をおこないますが、メスの場合は脱皮の周期が2年~3年です。
甲殻類は脱皮を繰り返すことで身体が大きくなるので、自然とオスの方が大きくなるということです。
なお、毛ガニは名前の通り甲羅や脚に硬い毛がびっしりと生えていますが、なぜ他のカニより毛が発達しているのかは正確に分かっていません。
色々な意見があるうち「毛によって水流の感覚をキャッチして外敵から身を守る」「脱皮したばかりの柔らかい甲羅を守る」などが有力な説とのことです。
ちなみに毛ガニは肉食性の生き物で、ほかの甲殻類や貝類、小型の魚類などを食べて成長しています。
寿命
毛ガニの寿命はだいたい15年程度と考えられています。
甲殻類は生きた年数分だけ身体が大きくなる傾向にありますが、毛ガニのサイズから考えると一般的に流通しているものは10年前後のものと推測されます。
なお、毛ガニと並んで三大ガニと称されるズワイガニの寿命は同程度の15年で、タラバガニの寿命は20年〜25年以上です。
生物学的に言えばタラバガニはカニではなくヤドカリの一種となりますが、日本では水産資源の分類上タラバガニをカニとして扱っています。
毛ガニの味と美味しい食べ方
毛ガニは北海道を代表する名産品のひとつで、その味わいはカニの中でもトップクラスと言われています。
そんな毛ガニの特徴は身質が繊細で甘みが強いところです。
ズワイガニやタラバガニと比較するとサイズが小さいので可食部も少なくなりますが、そのデメリットを補うほど旨みに溢れています。
また、毛ガニはカニミソの量と美味しさに関しても非常に高い評価を得ています。
そのため、カニミソ好きの方には毛ガニがおすすめと言えるでしょう。
なお、美味しい食べ方としてはシンプルに塩茹でがベストです。
しっかりと汚れを落とした毛ガニを20分程度茹でれば完成します。
ほかにはカニミソを食べた後の甲羅に日本酒を注ぎ、少し加熱して飲む毛ガニの甲羅酒もおすすめです。
ちなみに毛ガニは脱皮してから時間が経った「甲羅が硬いもの」の方が美味しいとされています。
まとめ
獲れる場所によって旬が異なり、1年中美味しい状態のものを食べられる「毛ガニ」について詳しくご紹介してきました。
毛ガニは三大ガニのひとつで、ズワイガニやタラバガニと並ぶほどの高級食材です。
ほかのカニより身質が甘く繊細な味わいを魅力としていて、カニミソの美味しさもトップクラスと言えます。
日本の場合は水揚げされる場所がほぼ北海道に限定されているため、旅行で訪れた際にはぜひとも新鮮な毛ガニを味わってみてください。